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《整体の師匠とトレーナーの師匠》*このコラムは整体院のお客様限定メルマガの転載です。
今回はトレーナーとしての師匠である「渡辺なおみ先生」のお話を少しさせていただきたいと思っています。
私の徒手療法(整体)の師匠は及川雅登先生で、日大レスリング部のヘッドコーチを務め、関節ニュートラル整体というご自身が開発された技術を普及されている徒手療法の業界では有名な方です。
トレーナーとしての師匠は渡辺なおみ先生と言う方で、ストレッチポール®のエクササイズの「ほぼ全て」を作った先生で、やはりトレーナー業界では有名な方です。
日本コアコンディショニング協会公式ブログにある渡辺なおみ先生の紹介ページ
⇒https://ameblo.jp/jcca-jimukyoku/entry-10723906648.html
理学療法士で旭化成陸上部のトレーナーなどもされていた方です。
芸人に同性同名の人がいるので、ネットで調べても自分の名前はほとんど出てこないとよく嘆いていました。(笑)
その渡辺先生が皆さまとどう関係があるのか?という話ですが、先日はお客様の施術中にこんな事を聞かれました。
「先生たちもトレーニングの流行を追いかけ続けなければいけないから大変だよね?○○トレーニングとか、××トレーニングとか次から次へと出てくるもんね」
これは一般の方にしたら鋭い指摘だなぁと思いました。
というのも、ファッションの世界のようにフィットネスにも「流行」があります。
例えば、エクササイズツールで説明すると…
「バランスボール」が流行ったと思ったら、しばらくして次は「ストレッチポール®」が流行りましたよね?
そして、ストレッチポール®のブームが落ち着いて、現在は短いストレッチポール
のような形をした「グリッドローラー」が流行っていますね。
こういう表面上の流行を見ると「次から次へ」と新しい物が登場しては消えているように思えますが、実はちょっと違います。
バランスボールは日本で流行したのは大体20年ほど前と思います。
しかし、元々は1960年代にスイスで子供の玩具「スイスボール」として誕生したものでした。
それを1970年代に著名な理学療法士のクライン・フォーゲルバッハが「小児脳性麻痺」のリハビリツールとして使用し普及したのが始まりです。
日本へはアメリカでバランスボールを学んだ阿部良仁先生(私はバランスボールを阿部先生に教わってました)が持ち帰り、最初はスキーの選手に普及したのです。
そのように、実はバランスボールの歴史は結構古いのです。
日本ではブームは廃れ日陰の存在となりましたが、ヨーロッパでは今でもリハビリツールとして重宝されています。
次は「ストレッチポール®」ですが、これは元々「フェルデンクライスメソッド」というボディーワークのツールです。
フェルデンクライスメソッドは今から約100年前に世に出た歴史の長いメソッドです。
また日本では余り知られていませんが、世界三大ボディーワークと呼ばれる程に世界的に有名なメソッドです。
創始者は物理学者のモシェ・フェルデンクライスです。
フェルデンクライスが元々は「丸太」を使って色んなワークを指導していたところ、お弟子さん達から「痛い」という意見が多かったので、痛くない使い勝手の良い素材を探して「発砲ポリエチレン」を芯材にした「フォームローラー」というエクササイズツールになったと聞きました。
「ストレッチポール®」は、当時横浜マリノスのトレーナーだった日暮清氏がアメリカでフェルデンクライスメソッドを学び、日本に紹介した際にフォームローラーと差別化しようと「ストレッチポール®」と名称を商標登録しただけで中身はフォームローラーなのです。
私はストレッチポールのトレーナーの育成をしていたので、いわば協会の中の人でしたが、この話は協会でも上層部しか知らない話です。
私はフェルデンクライスのトレーナーと一時期一緒にセミナーの仕事をしていたので、裏話で聞いたので知ってますが…ストレッチポールの協会では秘密にされています。(下がその当時の動画です)
もちろん、未だにフェルデンクライスメソッドではフォームローラーはエクササイズツールとして重宝されています。
最後は「グリッドローラー」ですね。
これは今でこそ「筋膜リリース」の為のツールとなっていますが、元々は「トリガーポイント療法」のツールとして使用されていたようです。
これもほとんどの人が知らない話です。
なぜ?言い切れるか?
それは私は世界に「筋膜リリース」を流行らせた「ロルフィング協会」の前理事長である大久保圭祐先生と仲が良いのですが、大久保先生すら知らなかったので…
まぁ、ほとんどの人は知らないと思います。
トリガーポイント療法では、多くの慢性痛を持つ人には筋線維中に「痛みの引き金点(トリガーポイント)」があると考えられていて、それが存在する筋線維は筋収縮を促すカルシウムイオンを放出する「筋小胞体」が破損していて、カルシウムイオンが筋線維中に随時露出して、過剰収縮しているという仮説を立てています。
その治療においてトリガーポイントのある筋線維をトランスバースマッサージという「ゴリゴリ」と筋線維を切る独特なマッサージテクニックを使用して一度破壊し、自然治癒⇒再構築する事によって症状緩和する事を狙っています。
トリガーポイント療法も歴史は古いのです、創始者はロバート・ケネディの主治医だったトラベル医師ですからね。
それだけ聞いても歴史の古さが理解頂けると思います。
今お話したような事はネットで調べてもほとんど出てきません。
実はトレーナー達もほとんど知りません。(特に最近の若いトレーナーは)
つまり、何が言いたいかと言うと、日本人の悪いところで何でも表面的な話で盛り上げて「ブーム」を作って商品を売ろうとしてしまうので、結局誰も「深堀り」しないからエクササイズの「本質」が分かってる人が少ないのです。
その為にブームが去れば一気に熱が冷めてしまい、世間に根付かないのですね。
なぜヨーロッパではバランスボールは未だにリハビリツールとして活用されているのに、日本ではすっかり廃れてしまったのでしょうか?
それは日本のトレーナーの多くがエクササイズの「本質」である「原理・原則」を理解しないで「形」ばかりを学ぼうとするからです。
料理人に例えるなら「レシピ」はたくさん知っているけど、料理の基礎(包丁の使い方、調味料の種類、調理のバリエーション)を知らない状態です。
そんな料理人はレシピ通りには調理出来るけど、具材が足りないなどのイレギュラーが起きると全く対応出来なかったり、自分自身で新しい料理は作れません。
しかし料理の基礎を学んでいる人なら、レシピを知らなくとも「なんとなく」で料理を作れたりしますし、自分自身で新しい料理を創作する事も可能です。
エクササイズも同じで「原理・原則」を学ばないトレーナーは、エクササイズの「形」ばかりをたくさん学ぼうとします。
だから、習った「形」の指導しか出来ないので、イレギュラーがあると対応出来ないし、ましてや新しいエクササイズなんて作り出せっこない。
結果として持っているエクササイズのネタが尽きると、次のネタを仕入れるという繰り返しなので流行に簡単に流されてしまいます。
そういう流行に流されるトレーナーばかりになってしまうと、教わる一般の方々も同じように流行に流されるようになってしまうのです。
私のトレーナーの師匠の渡辺先生はストレッチポール®のエクササイズのほぼ全てを考案された方ですが、そんな「形」ばかり求めて「原理・原則」を学ばず流行に流されるトレーナーが多い状況を大変危惧していました。
そんな渡辺先生が良く仰っていた言葉がありました。
「メソッドの名称は人間の身体の原理・原則に名前を付けただけのものである」
です。
そんな渡辺先生の言葉を聞くまでは私もより多くのメソッドを学べば良いと思っていましたが、それ以降はメソッドの土台となっている人の身体の原理・原則
トレーニングの世界では主に「機能解剖学」「生理学」「バイオメカニクス」などが原理・原則になりますが、それらを徹底的に学ぶようになりました。
そうすると次から次へと出てくる業界の新しいメソッドやトレーニングの流行に流される事は次第になくなっていきましたね。
《メソッドは無限に出て来るけど、人間の身体の原理・原則は一つ》
ここまで話してきた事は主にトレーナー業界の話ではありますが、皆さんの参考になる話をこれからしようと思います。
・ピラティス
・ヨガ
・ファンクショナルトレーニング
・ムーブメントトレーニング
・体幹トレーニング
・ウェイトトレーニング
色々とエクササイズの種類はありますが、それらは人間の原理・原則に名前を付けただけのものです余り捉われないでください。
ついついメディアでよく目にするエクササイズが良いと思いがちですが、実際にはどれも大した差はありません。
よく「ピラティスってどうですか?」「ヨガってどうですか?」と聞かれる事がありますが、どちらが良いと言うよりは「どちらが私に向いているか?」になります。
逆に「ピラティスが一番良い」「ヨガが一番良い」「体幹トレーニングが一番良い」
などと言ってるトレーナーがいたなら、そのトレーナーは人の身体の原理・原則が良く分かっていないと思って良いと思います。
良いトレーナーはお客様に「メソッド」を提案するのではありません。
その人の健康作りの中で足りない要素を鍛える事の出来るエクササイズや、その人のトレーニングに対するモチベーションを高める事が出来るエクササイズを提案します。
分かりやすく再度料理に例えると「夏場で汗をかきやすい時には塩味をいつもより強めにする」そんな工夫が出来る料理人は本当に優れた料理人と言われますよね。
また「オムライスが食べたい」という人に「天ぷら」出す料理人はいませんよね?
そのように決まったレシピ通りに料理を出すのではなく、レシピを誰よりもたくさん知っているのが偉いのではなくて
その場の状況やお客様の「体力要素」や「解剖学的特徴」更には「内面」にまで思いをはせてから「何を提供すべきか?」
を考え、臨機応変に提供出来るのが良いトレーナーだと思います。
どんなお客様にも「ピラティスが一番」「ヨガが一番」「体幹トレーニングが一番」と言ってるトレーナーは、料理人が「ラーメン以外は料理じゃない」「ラーメンしか勝たん」と言ってるのと同じです。
また「ピラティスではこの形が正しい」「ヨガではこの形が正しい」と拘っているトレーナーは「レシピ通りにしか料理を作れない」料理人と同じです。
身体の原理・原則がまだ理解出来ていないトレーナーだと思います。
恐らく日本で一番有名で実績もあるピラティストレーナー本橋恵美さん
私は過去に本橋先生のセミナーに参加した事があるのですが、その時にピラティスやってる人なら最初に学ぶ「超基礎」のエクササイズ「ロールアップ&ダウン」を(知らない人の為に動画を貼っておきます)
本橋さんは「背骨が固い人は出来なくても構わない」「出来ない人は拘らず違うエクササイズをしてください」と言ってました。
実は私もそう思います。
ぶっちゃけるとロールアップ&ダウンは出来ても別に健康とは関係無いです。
逆に柔らかいだけの人なら簡単に出来てしまいますが、健康でも背骨が固い人はなかなか出来ません。
しかし、形だけに捉われるトレーナーはしつこく出来るまでお客様にやらせてしまいます…これは結構ピラティスインストラクターあるあるなのです。
youtubeで「ロールアップ&ダウン」を検索すると以下のような動画が結構出来てきます。
機能解剖学をしっかり学ぶと出来なくとも全く問題無い事が分かるのですがね…説明すると長くなるので、興味ある方は整体院で直接聞いてください。
本橋さんくらいの大御所が言わないとこういう現状はなかなか変わらないと思いますね。
それ位にトレーナーこそ「名前」と「形」に捉われているんですね。
皆さんが自分の身体の悩みを相談した時にしっかり話を聞いてくれて
「○○さんは○○が弱いので、○○を中心にエクササイズを行うのをお勧めします。」
「○○さんは股関節の骨格上このエクササイズはやりにくいので無理せず実施してください」
と言った感じで「あなたの個性に合わせた」具体的なアドバイスを出来るトレーナー
または「クライアントファースト」で皆さんに常に寄り添ってくれるをトレーナーを選べば、ピラティスやヨガなどのメソッド関係無く良い結果をもたらすと思います。
私がそれが出来ていると言う訳ではないですが、そうなれるように日々心掛けて精進していますので…
「出来て無いな」と思った時はやんわりとアドバイスしてください(^^;)
今回のコラムは以上です。
最後までご覧になって頂きありがとうございました。