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バイオメカニクス(生体力学)と 肩こり・腰痛の関係 前編
筋力や柔軟性より先に確認したい、「力学的に無理のない動き」のお話です。
重心線と姿勢を表したバイオメカニクスのイラスト
前編

バイオメカニクス(生体力学)と
肩こり・腰痛の関係

以前のメルマガで、身体の動きを評価するとき、何より先に確認したいものとして「バイオメカニクス(生体力学)」をご紹介しました。

筋力、柔軟性、敏捷性、バランス。

どれも大切です。しかし、重力のある地球上で動く以上、どれほど筋力や柔軟性があっても、力学的に成り立たない動きはできません。

まず見るべきなのは、
「その動きは力学的に可能か?」です。

人間の身体も、力学からは逃れられない

立っている人の重心が、両足で囲まれた範囲――「支持基底面」から大きく外れると、身体には倒れようとする力が働きます。

そこで私たちは、筋肉を使ったり、関節の位置を変えたり、足を一歩踏み出したりしてバランスを取ります。

マイケル・ジャクソンが、身体を真っすぐに保ったまま大きく前へ傾けるダンスで世界を驚かせました。

しかし、あの動きも力学を超越したわけではありません。

靴のかかとを舞台に固定する特殊な仕組みによって、物理的に倒れないようにしていたからこそ可能だったのです。

マイケル・ジャクソンのゼログラビティ動作の仕組み

つまり、マイケルは別として(笑)
通常は身体の動きを見るときには、筋肉一つひとつを考える前に、重心と足元の位置関係を見るだけでも多くのことが分かります。

「良い姿勢」とは、形の美しさだけではありません

姿勢の評価でよく使われるのが、耳、肩、股関節、膝、足首などの位置を結んだ「ランドマーク」です。

姿勢のランドマークと重心線

重心線と関節の位置が大きくずれるほど、身体が倒れないように筋肉や靱帯などが支える必要が生じます。これを簡単に言えば、「姿勢を保つために必要な力が大きくなる」ということです。

専門的には「関節モーメント」と言います。

人間の場合はいわゆる正しい姿勢の時に、最小限の関節モーメントで姿勢を維持できると言われています。

下のイラストは立位姿勢を支える主要な関節に生じる関節モーメントです。

立位姿勢の主要関節に生じる関節モーメント

もちろん、教科書どおりの姿勢から少し外れたからといって、すぐ肩こりや腰痛になるわけではありません。

姿勢と痛みの関係には、運動量、睡眠、ストレス、同じ姿勢を続ける時間など、さまざまな要因が関係します。

ただし、首や腰から重心線が大きく離れた姿勢を長く続ければ、姿勢を支える組織の仕事量が増え、疲労や不快感につながりやすくなることは、力学的にも想像しやすいと思います。

下は正しい位置に頭がある場合と、頭の位置が前にズレている場合の頸椎に掛かる関節モーメントと筋への負担増加を説明するイラストです。

頭部前方偏位に伴う頸椎・筋肉への負荷増加

疲れたときの姿勢にも、ちゃんと意味がある

例えば、骨盤を前へ押し出し、上半身を後ろへ預けるように立つ「スウェイバック」と呼ばれる姿勢があります。

スウェイバック姿勢の例

これは「背中(バック)を後ろに移動させる(スウェイ)」から来ています。別名で「疲労姿勢」とも呼ばれています。

赤ちゃんを抱っこしているときや、長時間立って疲れたときに、似た姿勢を取った経験がある方も多いでしょう。

この姿勢は、単純に「悪い癖」なのではありません。筋肉の働きを一時的に減らし、股関節前面の靱帯などに身体を預けて休もうとする、身体なりの省エネ戦略とも考えることができます。

疲れたときに時々使うのであれば、必ずしも問題ではありません。しかし、それが常態化してしまうと問題になってきます。

この姿勢以外の立ち方を選びにくくなり、いつも同じ組織に負担が集中しているなら、身体の使い方を見直す余地があります。

スウェイバック姿勢を好む人は体幹、股関節周囲筋が弱く、股関節前面にある巨大で強力な「腸骨大腿靭帯」にもたれかかるように立っていると言われています。

この姿勢が常態化していくと腸骨大腿靭帯は慢性的に伸ばされ続けて緩んでいくと世界的な理学療法の専門書である「運動機能障害症候群のマネジメント」にも記載があります。

また、このような姿勢のクセが「変形性関節症」「股関節インピンジメント症候群」の遠因になりうると説明する専門家もいます。
https://physiocenter.jp/2230

「姿勢が悪いと腰痛、肩こりになりやすいのよね、分かってるって」というレベルの話では無いのです。

下の写真の方は「スウェイバック姿勢」を取る事が常態的になっているのですが、施術後の簡単な体幹トレーニング(骨盤底筋群)の実施で「一時的」に姿勢が正常に戻りました。
※写真掲載はご本人の許可を取っております。

しかも、ちょっと細かい事を説明すると…スウェイバックだけじゃなく、反張膝と言って、膝も通常の反対側に曲がっていて…つまり、膝が反った状態で立つことが常態化しています。

これは膝の靭帯(内外側側副靭帯、前後十字靭帯、後方関節包)などに負担が加わる原因になり、やはり膝関節症の遠因となりかねません。

スウェイバックと反張膝の改善比較写真

でも、姿勢を直してもすぐ戻ってしまうのはなぜ?

上の写真の方もですが…施術や体幹トレーニングの直後には、立ち姿勢がきれいになる方がいます。

それでも日常生活に戻ると、しばらくして元の姿勢へ戻ってしまうことがあります。

これは、筋力が足りないからとは限りません。

立ち止まった姿勢だけでなく、前へかがむ、反る、歩く、物を持つといった動作の中で、「重心をどのように移動させているか」が関係している場合があります。

次回は明日、姿勢を直しても元に戻ってしまう理由と、前屈・後屈時の重心コントロールについての説明と、その改善エクササイズの一例を紹介いたします。

※痛みやしびれが続く場合、急に症状が強くなった場合は、自己判断せず医療機関へご相談ください。
03-6805-9343
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