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「正しい歩き方」より大切なこと──骨格と歩行の“個性”を理解する

「正しい歩き方」より大切なこと──骨格と歩行の“個性”を理解する

 

1. 「歩き方」に悩む日本人、「歩き方」を知らないマサイ族

前回は「歩き方に悩む日本人」と「歩き方を知らないマサイ族」というテーマでコラムを書きました。
まだお読みでない方は、HPブログに転載しておりますのでぜひご覧ください。
歩き方に悩む日本人と、歩き方を知らないマサイ族

 

文章を読むのが苦手な方には、AIチャットボット「NotebookLM」が要約した動画版もあります。
ややニュアンスの違いはありますが、概要はこちらでどうぞ。


2. 歩き方を考えすぎると、歩けなくなる?

自転車に乗るときに「自分は正しく乗れているかな?」と不安になる人はいません。
ところが「歩く」という、もっと単純な動作になると不安を感じる方が多いものです。

 

実際、当院にも「歩き方が正しいのか」と相談に来られる方が数多くいらっしゃいます。
中には「いろんな先生に違うことを言われ、考えすぎて歩けなくなった」という方まで……。


笑い話のようですが、実際にあるのです。

私たちの歩行のような日常動作は、本来「自動化」されています。
それを考えながら行うと「脱自動化」され、かえってパフォーマンスが低下します。

 

ロシアの天才生理学者ニコライ・ベルンシュタインの著書でも、
まさにその現象が分かりやすく説明されています。
彼の理論は現代の運動科学「ダイナミカルシステムズ理論」の基礎にもなっています。

 

その事について書いた当院blog記事

https://www.okugawaseitai.com/blog_detail?actual_object_id=720


3. 変えられる個性と、変えられない個性

私が特に感じているのは、「歩き方に悩むこと自体が健康的なのか?」という疑問です。

マサイ族は一日に100kmも歩くそうですが、誰かに歩き方を教わったわけではありません。

    
一方、歩き方に悩み、教室に通っても10kmで疲れてしまう現代人──。
どちらが健康かは明らかですよね。

 

当院では、乳児が一人で歩けるようになるまでの過程を模倣したエクササイズを行い、
“自分の歩き方”を自然に理解できるようにしています。

 

「正しい歩き方」という“型”に合わせるのではなく、
自分の骨格や柔軟性などの“個性”に合った歩き方を身につけることが目的です。


4. 股関節の“角度”が歩き方を決める

歩行に関して特に問題になる骨格の個人差は股関節の「頚体角」「前捻角」です。

 

まず頚体角とは前額面上から見た、大腿骨頸部と骨体部の長軸の作る角度の事です。
通常は125度程度の角度ですが、125度以下になりますと「内反股」と言って「X脚」のような見た目になりやすいです。
逆に125度以上になると「外反股」と言って「O脚」のような見た目になりやすいです。

 

  

ちなみに乳児は大体140~150度くらいの角度なのですが、完全に骨化してない為に大きくなる過程で歩行中の骨に掛かる負荷や筋肉の影響で角度が変わっていき最終的には125度に落ち着くそうです。

 

つまり、赤ちゃんが足を開いて歩くのはバランスを取る目的もありますが、それ以上にそもそも骨格が「外反股」だからなんですね。

   

それと同じく、骨が完全に骨化した大人で「外反股」「内反股」のような個性的な形状の方はそれに合わせた歩き方をした方が自然と言う事です。

 

続いて「前捻角」ですが、これは大腿骨の本体部分の長軸と頚部の長軸を水平面で見た時の「捻じれ角」の事です。

  

簡単に言うと大腿骨の骨頭に対して15度くらい前に捻じれて本体部分がくっついてるから、自然立位で「膝が前を向く」ようになっています。
全く捻じれが無い場合は膝が外を向いてしまいます。

 

下は実際の骨の比較写真で前捻角の違いを分かりやすく示したものです。

右に提示している足の骨がいずれも正常の前捻角です。

  

一番下の写真は前捻角が異なれば「膝の向く方向も変わる」事を端的に著している比較写真です。

 

この前捻角も乳児では30度程の前捻じれがあるのですが、大きくなる過程で15度程度に落ち着きます。

 

これが大人になっても15度以上の大きな前捻じれの場合は「前捻股」
逆に15度以下の小さな捻じれの場合は「後捻股」と言います。

 

最近では骨格の個性に合わせて身体の使い方を身に着けた方が良いとなってきています。

最近はyoutube動画でも「股関節形状に合わせたトレーニングフォーム」と言ったタイトルでたくさん動画がアップされています。

  

股関節の人工関節置換術のリハビリで有名な理学療法士の宮嶋佑先生も、前捻角の個人差によって身体の使い方を変えるべきと主張しています。

https://1post.jp/6056

 

特に「後捻股」の人は通常の骨格の人と同じように股関節を使っていると「股関節インピンジメント症候群」や「股関節関節唇損傷」が生じやすいのでは?と言われています。

 

その事について私が説明した動画

 

実際に当院でも「股関節インピンジメント症候群」のような股関節の強いつまり感、違和感を訴えるお客様の検査をしたところ「強い後捻股」だった為に、施術後に身体の使い方のアドバイスをして初診を終えて、次の日にご来院頂いたところ僅か二回の施術で大きく症状が改善した事がありました。

 

その方へのインタビュー音声です。

 

そもそも私は10年以上前から股関節の形状に合わせた運動指導を重視していましたが、今では多くの臨床経験を経てその必要性は確信に至っています。

 

この股関節の前捻角の違いは大分と一般的になってきましたが、まだまだ説明するのが難しい部分があります。

 

というのも、ピラティスなどの一部エクササイズでは「基本姿勢ではつま先正面」と教えているからです。


5. 「つま先正面」神話の落とし穴

しかし、これはあくまでエクササイズの上での話と考えてください。
特にピラティスに関しては創始者のジェセフ・ピラーテは「つま先はやや外側が機能的なので、立位の基本姿勢はつま先がやや外向き」と指導していて、今も「ピラティススタンス」として継承されています。

 

つま先を正面に向けるようになったのは最近の話なんです。(ピラティスという名前で指導する人達が、創始者と違う事をするのは本当に不思議ですね(笑))

 

また、歩き方でつま先を正面に向けて歩くと教わったと言う方がいらっしゃいます。
それは全くの間違いではないですが、正解でもないのです。

 

というのも、人は歩く時には速さによって歩き方を変えています。
それは自動的に調整しているのですが、上半身と下半身の「位相」を変化させています。

      

 

どういう事か?と言いますと、ゆっくり歩く際には上半身と下半身の「位相が小さい」
つまり、身体をほとんど捩じらず歩きます。

 

早く歩けば歩くほどに「位相」は大きくなります。
つまり、早く歩けば歩くほどに身体を捩じって歩く訳です。

 

この下の太字は専門書の引用なので、詳しく理論を知りたい人だけ読んでください。

以下引用

 

水平面において骨盤と胸郭は反対方向に回旋すると述べたが、厳密には必ずしも完全に反対方向に回旋しているわけではない。健常者が平均的な歩行速度で歩いているときには、骨盤と胸郭の回旋運動の位相差は90°程度であり、歩行速度が上がるにつれて位相差は180°に近づき、速度を遅くしていくと徐々に同方向への回旋運動に近づく) (図16)。

 

なお、位相差○とは同じタイミングでの同方向への動きのことであり、位相差180°とは運動方向が正反対の動きである。位相差90°とは動きのタイミングが位相差180°の半分だけずれた動きである(図16)。 「身体運動学 市橋著」

 

引用終わり

 

お年寄りなどで身体を捩じらず歩く人は観察して欲しいですが(バレないように)みんなつま先は外向きです。


若い人で通勤など急いで大股で歩いている人はつま先がやや正面を向きます(正常で約7度外向き)

皆さん自身も自分の身体で試してみてください。


特に大股で歩く時にはどう頑張っても「つま先を外向き」に出来ませんからね。(笑)

 

これを言葉で説明するのはめちゃくちゃ大変なのですが、敢えて説明すると身体を捩じって歩く時は骨盤が回旋します。


足を前に出す方の反対に骨盤は回旋しますから(左足を出す時は骨盤は右回旋します)前にだす足の股関節は「外旋」する事になります。

 

骨盤の回旋が大きくなればなるほどに股関節の「外旋」が必要になります。

 

しかし、このような事を考えながら歩くと「速く歩く時は足は正面で、ゆっくりだと外向きで…」却って上手く歩けず疲れてしまいますよね?

 

なので、そもそもそのような足の向きなどは身体が整っている人ならば

骨格の個人差なども配慮して勝手にやってくれることなのです。

 

なので、私たちは身体を整える事に集中しようというのが当院の考え方なんですね。


6. 自分の身体に任せて歩くということ

今回の内容は普段聞きなれない言葉も多く、分かり難いと思いますので理解出来なかったところは遠慮なく施術時にでも質問してください。


次回は自動的に正しく歩けるように「身体を整える」とはどういう事か?について説明します。

 

正しく歩けるためには「背骨が○○の状態で歩ける事が必要です」

 

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