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筋膜についての最新の知見を簡単に説明します
前回は「筋膜」という言葉について説明しました。
厳密には、皆さまがイメージする「筋膜」
つまり、筋肉を包む膜は「筋筋膜」のことで「筋膜」と言う言葉の意味はもっと広い意味になると言う説明を致しました。
前回のコラムはこちらから
「筋膜」という言葉の語源は「fascia」は紐とか帯、包帯という意味の言葉で、筋膜は筋線維だけでなく、骨や神経、内臓などの様々な身体の器官を包み、繋いでいる繊維だという話をさせていただきました。
様々な器官の位置を決めるのは筋膜になりますので、最近では「第二の骨格」と呼ばれる事もあります。
さて、今回は以前は解剖学の実験において、特に研究する価値の無い「ゴミ箱に捨てられる組織」であった筋膜ですが、近年はその重要性に気付きスポットライトを浴びています。
特に筋膜には「神経」がたくさん分布している事が分かり、その神経も運動の指令を送る「運動神経」だけでなく、知覚神経が想像以上に多くある事が分かりました。
今までは筋肉の筋線維が知覚の主な情報を脳に届けていると考えられていましたが、現在では筋線維だけでなく、それ以上に筋膜が情報を与えていると考えられています。
知覚神経の種類もバラエティーに富んでいて
「動きや形を感じる神経(固有知覚性)」「刺激を感じる神経(侵害受容性)」「内臓など、身体の中の感覚を伝える神経(内受容性)」などがあると分かっています。
ここで、筋膜の知覚神経にまつわる興味深いトピックを二つ紹介します!
〇施術中の筋肉の動きや形を意識的に感じると痛みが改善しやすい?
面白いトピックの一つ目は筋膜の動きを感じる神経である「固有知覚性」の神経の情報が痛み情報と拮抗するのでは?という話です。
分かりやすい言葉にすると「筋膜の動きや形の変化」を感じる能力の高い人は、痛みを抑制しやすいのでは?という研究結果があるようです。
昔から施術家の中には「施術中の筋肉の動く感覚や形に集中してください」と言葉掛けする人たちがいましたが、そのような方たちの行っているアプローチにある程度エビデンスが示せるようになってきました。
とはいえ、施術中に意識させ過ぎると良くないケースもあるのでは?と言う事と、後ほど説明します。
内受容感覚にアプローチが必要なケースには、逆に固有知覚性感覚へのアプローチはマイナス効果になる可能性があるという見解もあるので、全ての人にお勧めできるアプローチとは言えない様です。
〇筋肉の感覚に目を向けると心の病が改善する?
二つ目はうつ病、パニック障害、拒食(過食)症、などの心の病には「内受容感覚」へアプローチすると改善が期待できるという研究結果があるようです。
「内受容感覚」とは、内臓の感覚や身体の中で起きている事の感覚…
例えば「胸がドキドキする」「お腹が空いた」などの感覚で、心との繋がりが大きいと言われています。
「内受容感覚が心との繋がりが大きい」これは何となく経験的に理解出来ますよね。
例えば、身体が疲れて息苦しい時に何がトラブルが起こると「いつもより不安感を感じやすい」などありませんかね?
身体の感覚の解釈は感情に左右されやすいのは、誰しも何度か経験しているのではないかと思います。
心理学の「吊り橋効果」など最たる例ですよね?
この内受容感覚は原始的な感情と繋がりが大きく、上手く刺激する事で心の病の改善効果が期待されています。
身体の中の感覚である内受容感覚の情報は脳の「島」という、原始的な情動の喚起に関係する部位に送られます。
なので、内受容感覚へのアプローチとしては…
施術時に「筋肉の緩む感覚に目を向けて」などの声掛けが有効だと現時点では考えられています。
実は皮膚科学の世界でも「有毛部分」
つまり、手のひらと足裏以外の毛が生える部分の皮膚には、島へと蝕覚情報をたくさん送る神経である「遅速C繊維」が多く見られる事が分かっています。
「遅速C繊維」が「毛づくろい」つまり「グルーミング」のようなゆっくりさする刺激に反応しますので、整体などで「軽擦法」という「さする」技術(大体施術の最初に行います)が存在しますが、その有効性に多少のエビデンスが今後出来そうです。
〇難病改善に対する筋膜の内受容感覚への期待
更には線維筋痛症という、難病に指定されている病気がありますがこれにも筋膜の内受容感覚のアプローチは効果が期待されていて、研究がされていると言います。(線維筋痛症は心の病とするお医者様もいます)
これには先ほどの原始的な感情の喚起と関りが深いという理由以外に、線維筋痛症の患者の多くに筋内膜の肥厚が見られる事が根拠だそうです。
実は私は過去に二人線維筋痛症と診断された方を診ました。
お一人は余り改善しませんでしたが、もう一人の中学生の女の子は完全に症状が改善しました。
私が施術した時にはお医者様が匙を投げた状態だったので、100%私の施術の効果なんておこがましい事は思っていませんし、事実それは無いと思いますが…なんらか、良い効果を与えたと思っています。
その際には、筋膜の弾力を取り戻す事に(若い女の子なのに、異常に筋膜が固かったです)注力をしました。
その当時は森先生も施術に入っていたので、二人で筋膜の固さに疑問を持ってアプローチの打ち合わせなどしていたので、苦労した分よく覚えています。
〇最後に
「手当て」という言葉が日本にはありますが、私たちの仕事は技術の上下に関わらずお客様を直接手で触る事が重要だと改めて感じました。
変な話ですが、手で触るのは「筋肉(筋膜)」「関節」「皮膚」などだけでは無く、実のところ「心」も間接的に触っているのかも知れないと考えると
改めて、責任感と遣り甲斐を感じました!
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参考文献
「皮膚感覚の不思議」山口創著
「スポーツと運動の筋膜」竹内京子監訳
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