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奥川です。
前回は肩(肩甲上腕関節)を正しく使うコツが4つあるという話をしました。
まずは①肩に違和感がある時はストレッチをしない方が良い。
という話を前回は致しましたが
今回は②肩甲骨は動けば良いという訳じゃない、について解説していきます。
②肩甲骨は動けば良いという訳ではない
巷で話題の「肩甲骨はがし」
当院でも行っていますが…
いかにも肩甲骨の動きが良くなって、身体に良さそうな感じがしますね。
肩こりに良さそうなイメージがありますよね?
しかし、そもそもですが「肩甲骨」が動くようになるのと、肩こりの改善は関係あるのでしょうか?
関節には「可動性」「安定性」両方の機能が求められますが、肩甲骨(医学的には肩甲骨と胸郭の関節は肩甲胸郭関節と言います)も同じく動き(可動性)が良いだけでなく、安定性が大切になってきます。
肩甲骨が極端に不安定ですと「翼状肩甲」と言って、腕を使った時に胸郭(肋骨、胸椎、胸骨で出来た骨格)にしっかり肩甲骨が固定されなくて、肩甲骨の内縁が胸郭から浮き上がってしまいます。(下写真右の肩甲骨が翼状肩甲)
翼状肩甲は病気でなる事もありますが、単純に胸郭のアライメントと肩甲骨周囲の筋肉のバランスの関係で健常者でも生じます。
肩甲骨はがしを行う動画などでは「肩甲骨が胸郭から浮き上がる事を良し」とする傾向がありますが、これは時には腕の力の発揮を妨げます。
イメージするなら、クレーン車のクレーンを腕と思ってください。
クレーン車の本体が肩甲骨で、地面が胸郭とするならば。
クレーンで重たい荷物を持ち上げる時に、クレーン車が地面にしっかり固定されていないなら、車体がグラグラして上手くクレーンが動きませんよね?
また、場合によってはクレーン車は転倒してしまうかもしれません。
ですよね?
これを言葉を入れ替えますと…腕で重たい荷物を持ち上げる時に、肩甲骨がしっかり胸郭に固定されないと力が上手く発揮されない…どころか、時には肩周囲の障害や局所的なストレスに繋がります。
上は肩甲骨の安定性が無くて肩を外転する際に翼状肩甲が起きてしまうケースです。
先程の例えでいうなら「クレーンで荷物もちあげようにも、クレーン車が転倒してしまう」状態なので、腕の力が十分に発生しないだけでなく、局所的ストレスや障害の原因になります。
「肩甲骨はがし」で得られる可動性は「他動的可動域」と言って、他人や何かしら外力によって動かしてもらった時の可動域です。
実際には自分で動かせる可動域である「自動的可動域」を広げないと、肩甲骨の安定性が無いので、逆に疲れやすくなってしまう可能性もあります。
最近はアスリートだけでなく、バレーダンサーも「翼状肩甲」がパフォーマンスを下げる事に気付いてblog書いている先生がいらっしゃいますね!素晴らしいです!
翼状肩甲の修正法について書いている、バレーダンサー佐藤愛先生のblog⇒https://www.dancerslifesupport.com/wing2/
健康な人ほどに「他動的可動域」と「自動的可動域」に差が無いと言われています。
また、他動的可動域はとても大きいが、自動的可動域が小さい場合は「傷害」が発生しやすいとトレーナーの間では言われています。
これは簡単な理屈で「自分で可動域を十分にコントロール出来ていない」と言う事だからです。
実際に私が過去に東京五輪スポーツクライミング銅メダリストの野口啓代選手を見た時期に、国体チャンピオンで野口選手のライバルだった池田結花選手を引退までサポートしていたのですが…
野口選手の運動療法を行った時に「自動的可動域」を確認したら、ほぼ「他動的可動域」と同じ範囲を動かせていました。
分かりやすくいうなら「自分の可動域をほぼ完全にコントロール出来ている」訳です。
大して、池田選手は他動的可動域はなんと!野口選手より広かったのですが、自動的可動域が狭かったのですね。
要は分かりやすく言いますと「身体は柔らかいが使えていない」と言う事です。
一般的には「柔らかいと良い」と考えがちですが、厳密には固くてもバランスよく固ければ健康の上では問題無いケースが多いです。
皆さんの周りでも固いけど「腰痛」「肩こり」「首こり」何も無いと言う人は結構いると思います。
大事なのは「バランス」と「コントロール」なんです。
今回のコラムをまとめますと…
✅肩甲骨は動けば良いというモノでは無い
✅「翼状肩甲」の人は要注意
✅他動的可動域も大切だが、最終的には自動的可動域が重要である。