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《徒手療法の施術で異常にくすぐったいと感じる人に何が起きてるか?考えた》
《徒手療法の施術で異常にくすぐったいと感じる人に何が起きてるか?考えた》
関節であろうと、筋肉であろうと、筋膜であろうと、徒手療法で施術をしていると、時折クライアントの中には異常に触られるのをくすぐったがる人がいる。
私自身は誰かに施術をしてもらってくすぐったいと感じた事は無いので、どんな感覚なのか?想像がつかない。
なので、手持ちの文献を参考に少し身体の中で何が起きているのか?考察してみた、このコラムをご覧になった方に参考になれば幸いである。

<くすぐったいのではなく、むずがゆい?>
筋膜に関する書籍で、ロルフ研究所の確か解剖学の先生だったシュルツの書籍「エンドレスウェブ」では、深部の組織が緊張していると「むずがゆさ」を感じると有る。
以下該当する部位を引用する。
『私たちは、むずがゆい部位の深層の組織には、常に過剰な硬さがある事に気付いています。むずがゆいところには、触れてはいけない側面もありますが、治療が必要とされる部位であることを示す兆候でもあります。軽すぎる触り方は通常余り役に立たず、その領域を含めた部位に対して和らげる操作が有用です。』(エンドレスウェブ149ページ)
これ以外には、私が読んだ徒手療法でコンタクトする部位がくすぐったくなる事に言及している書籍は東洋医学の書籍だったのだが、今回探したが見つからなかった。
記憶を辿ると…確か「虚証」の人間を按摩すると「くすぐったい」と感じる事がある。
と言った内容だったと思う。
「虚証」とは?東洋医学的には気が弱っている状態のことである。
私の記憶に残っているのはこんなところである。
自分自身の臨床の感覚だと、エンドレスウェブで述べている事は割と当たっているのではないか?と感じる点がある。
異常にくすぐったがる人は姿勢が悪い人が多いからである。

深層にある関節のローカル筋が過緊張しているのではないか?と想像する。
くすぐったがる部位は、私の経験上では「股関節」「脊柱付近」が多い。
以前にカイロプラクターの方のインスタグラムで、背骨のアジャストの際にくすぐったがる人がいると書いているのを読んだ事がある。
なので、背骨周りは私以外にも同業者の方は多かれ少なかれ、くすぐったがる人を経験した事があるのではないか?と思う。

姿勢が悪い人がくすぐったがる傾向が多いのだが、中でもスェイバック、言い換えると「疲労姿勢」の人が特に背骨周りがくすぐったいと言っているように感じる。
そう言う意味では東洋医学的な意味での「虚証」に近い人がくすぐったい人なのかも知れない。

<くすぐったいのか?むずがゆいのか?>
〇「痒み」は弱い痛み?

蚊に刺された後に無性に掻きたく感覚「痒み」ですが、発痛物質と起痒物質が似ている事と痛点と痒点の分布が似かよっている事。
また、痛みと痒みの脳までの伝導路が同じだと言う事から「痒み」は弱い痛みと言われていた時期があった。
〇「痒み」と「痛み」は別物。
しかし、実際には痒みと痛みは別物である事が、内臓では痛みを感じても、痒みは感じない事から分かる。
また、痒みをいくら強くしても痛みにならない事や、痒みと痛みでは起きた後の行動が異なる事と実際に脳の中では全く異なる領域が働いている事から、現在では「痒み」と「痛み」は別ものと考えられている。
〇「痒み」には「中枢性」と「末梢性」がある。
痒みのほとんどは皮膚で起こる末梢性のものだが、脳内だけで起こる中枢性の痒みもある。
中枢性の痒みは脳内の痒み受容体にモルヒネやβエンドルフィンが結合する事で起きたり、何らかの物質が脳内の痒み受容体に結合する事で起こる。
末梢性の痒みは大きく分けて「機械的刺激」によるものと「科学的刺激」によるもの2つがある。

機械的刺激は、何らかの物質が皮膚表面の痒点を刺激する事で起こる。
科学的刺激による痒みは、痛みとほぼ同様のメカニズムで起こると考えられている。
また、痒みは何らかの精神的な不快感を解消したい時にも生じる。
イライラすると頭を搔きむしるシーンなど、ドラマや映画でよく見られると思う。
実際に不安感や不快感を感じている時には痒みを感じやすいと言う。
一方で「くすぐったい」であるが、不思議な事にくすぐったさは自分で生じさせることが出来ない事は気付いているだろうか?
他人に脇をくすぐられると想像するだけでもくすぐったいが、自分で脇をくすぐったとしてもくすぐったくない事は容易に気づくと思う。
それは、元々くすぐったいという感覚は虫や寄生虫が身体を這う際の刺激に気づく為の感覚として生まれたからだという説がある。
なので、自分でくすぐったと分かる時には感覚を抑制するように脳が働いているのではないか?と言われている。
このように考えると、施術の際に触られた部位をくすぐったいと感じるのか?むずがゆいと感じるのか?どちらか?となると

私は「くすぐったい」と感じているのではないか?と思う。
理由としては、そのような方はセルフでの筋膜リリースなどでツールを使って、他人に触られてくすぐったい場所をコンタクトしても、全くくすぐったくならないからである。
かゆいのなら、同じくかゆくなるはずである。
しかし、くすぐったいのなら、自分でコンタクトしていると分かっているので、脳が抑制を掛けてくすぐったく無いと考える事が出来る。
と言う事で、エンドレスウェブの「むずがゆい」は実は「くすぐったい」の事ではないか?と思っている。
原文など知らないが、訳の時に微妙にニュアンスが変わったのではないか?と勝手に思っている。
<くすぐったさは快も不快も生じさせる>
くすぐりはそもそも寄生虫などが這う刺激の感覚として生まれている為に、不快を感じるのだが、小さな子供の頃にお母さんとのスキンシップやくすぐり遊びなどのコミュニケーションを通して、快の感情を生じさせるようになってくると言う。

つまり、くすぐりを行う相手との親密さで快が強くなるか?不快が強くなるか?が変わる感覚だと思う。
施術する側としては当然くすぐったくないように施術する事は当然なのだが、最悪くすぐったい経験をさせてしまった、それを言い出せるクライアントなら良いが我慢してしまうタイプの方だと不快感が強い施術となってしまう可能性がある。
施術者はくすぐったいと感じる施術をしない事は当然として、万が一にくすぐったいと感じさせても、不快に感じないようなオープンな環境をクライアントとの間に作る事が肝心に思う。

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